医師志望の学生さん、医学部生、研修医の皆さん、若手医師の方向け。
医師になってみたものの、税金は高いし、医者は増えるし、働き方改革はあるし、今後収入は大丈夫?
こんな疑問にお答えします。
・本記事の内容
- 医師の収入が今後必ず減少する5つの理由
- 医師の収入減に対する3つの対応策
「医者は高給取り!」
「医者になって、経済的自由をつかみ、人生楽々!」
「受験戦争の勝者=高額な収入が一生安定的に得られる!」
果たしてそうでしょうか?
勤務医医師の収入は、今後下がってきます。かなり断言できます。その理由を5つ提示し、3つの対応策を紹介します。
目次
医師の収入が今後減少する5つの理油
まずは、医師の収入が今後減少する5つの理由から考えてみました。
1.診療報酬の引き下げ
一つ目は、『診療報酬の引き下げ』です。
そもそも、診療報酬とは?
『患者さんが保険証を提示して医師などから受ける医療行為に対して、保険制度から支払われる料金』のことです。
例えば、Aさんが肺炎で、B病院で入院治療を受けたときに、診療報酬点数表(1点=10円)をもとに、医療費が計算されます。入院管理費が○○点、薬剤費が△△点、レントゲン検査費が✕✕点、合計、例えば5万点=50万円とかです。3割負担だと、利用者(患者さん)が3割支払い、残りの7割を保険者が支払う制度です。
診療報酬は2年に一度改定されます。
診療報酬は、厚生労働省と自民党、日本医師会が引き上げを迫る一方、財務省が引き下げを主張してきました。
最終的には政治的な判断で改定率が決まってきました。
ここ数年のパターンは薬価や材料費を市場実勢に合わせて引き下げることで、医療機関向けの診療報酬は引き上げを実施し、バランスをとってきたのです。
しかし、医療費の伸びもそろそろ限界です。
診療報酬を抑える方向に向かうことは間違いないでしょう。
また、一定の所得がある75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担が1割から2割に引き上げられました。
今後、高齢者の受診が抑制され、これまでのように医療機関が高齢者のサロンになるような状況は減少すると予想できます。
診療報酬を元に、医師には給与が支払われる(開業医は収益になる)ため、これが下がれば、もっぱら保険診療をしている医師の収入が下がるのは当然のことです。
自由診療(美容外科とか)をしている医師の数も漸増していますが、こちらも競争が激しく、厳しいでしょう。
2.医師過剰時代の到来
二つ目は、『医師過剰時代の到来』です。
医師が不足する時代は終わり、供給過剰になるということです。
厚生労働省が2020年の医学部定員をもとに推計した予測によると、下図のように、早ければ2024年、遅くても2033年に医師が過剰となり、2040年には医者が約1.8万人余るということになります。
医療界も、資本主義下の社会経済と一緒です。需給バランスが崩れれば、医師の平均収入も下がります。
診療科や地域によって多少の違いはあるでしょうが、都市部は近い将来、いち早く飽和してくる可能性があります。
3.働き方改革で時間外労働に規制が入る
三つ目は、『働き方改革で時間外労働に規制が入る』です。
一億総活躍社会の実現に向け、産業界で進む「働き方改革」、医師の世界も、この流れと無縁ではありません。
2024年4月からすべての勤務医に時間外労働の上限が適用され、原則として『月80時間以下、年間960時間以下』に制限されます。
これは、現実的にかなり問題です。
私は、外科医ですが、通常勤務(AM8:30 -PM5:15)以外が時間外労働となると、実際の勤務時間(AM7:30-PM8:00)、これで4時間、平日のざっくり20日間だけで上限の80時間になります。
さらに、時間外の緊急手術や土日の患者観察が加わると、一発で越えてきます。
人間らしい働き方ができるという点では喜ばしいことですが、これが適用されると、はっきり、勤務医の収入は大幅に下がります。
とくに残業代ありきで毎月の収入を想定していた人は、現状維持はできないと思ったほうがいいでしょう。
ましてや、アルバイト代も当てにならないということになります。
4.物価上昇率2%の目標が達成されることで、資産は目減りする
四つ目は、『物価上昇率2%で実質資産は目減りする』です。
これは医師だけでなく日本全体の問題ですが、物価上昇率2%の目標が達成されることで、資産は目減りすると考えられます。
預金の利息では物価の変動に勝てず、資産を預金で保有していると実質的な価値は目減りしてしまいます。
というのも、日本銀行は消費者物価の上昇率(インフレ率)を2%とする物価安定を目標に掲げ、『毎年、物価が安定的に2%ずつアップするまでは、マイナス金利を続ける』と宣言しています。
現在のメガバンクの金利は普通預金0.001%、定期預金0.002%ですから、もちろん物価上昇率には全く及びません。
医師は多忙なこともあり、毎月の給与のほとんどを普通預金に預けっぱなしという人も少なくありません。
つまり相対的に収入が目減りするのと同じような状況です。
5.人口減少・超高齢化が進むことで労働人口が減り、経済規模が縮小する
五つ目は、『人口減少・超高齢化が進むことによって労働人口が減り、経済規模が縮小!』です。
これも医師だけではなく日本全体の問題ですが、人口減少・超高齢化が進むことによって労働人口が減り、経済規模の縮小が始まります。
どんな産業も影響を受けますが、もちろん医療も例外ではありません。
患者数の減少、社会保障費の削減など、さまざまなマイナス要因が重なり、医師の平均収入も減っていくことは間違いありません。
これまで紹介したような大きな収入減の波は近い将来の話ですが、既に医師の収入減少は始まっています。
ここ数年、配偶者控除や給与所得控除の縮小など、医師のような高収入の給与所得者の手取り額が減少する税制改正が続いていますからね。
それでは、近未来の医師の収入減少に、どう対処したらよいか?
経験値をもとに以下の3つに絞ってみました。
医師の収入減少に対する3つの対応策
結論からいいますと、
- ①:副業
- ②:税金対策(節税)
- ③:個人事業主さらに法人化。
それでは、順に説明していきます。
対応策①:副業
まず最初は、副業です。
下の図は、2021年、医師938人に年収と副業についてアンケートがとられた結果です。
左が年収で、右が医師が副業で得た収入です。
全体の8割が年収1,000万円以上で、3割以上の医師(938人中322人)が副業を行い、副業で1,000万円以上稼いでる医師も1割ほど見られます。
ただ、直感的に『副業ではあんまり稼いでないんだ!』とも感じられました。
次に、副業の内容です。
第1位は圧倒的にバイト(非常勤勤務)でした。その次に、株、FX、不動産投資と続きます。
次に、副業をする理由です。
ずばり、1位は「収入を増やしたい」です。2位の「本業以外で収入源を確保したい」も似たようなものです。つまり、稼ぎたいが6割以上です。
次は、反対に副業をしない理由です。
1位が「時間の余裕がない」、2位が「職場で禁止されている」でした。
以上のデータからも分かるように、3割以上が副業し、多くはバイト、一方で、副業で1,000万円以上稼いでいるつわものの医師も1割ほどいるということでした。
私の現在進行形の副業は、下記の通りです。
その1:バイト
その2:不動産投資
その3:株式/CFD/仮想通貨
その4:講演・セミナー講師
その5:ブログ
医師が副業をするにあたって大切なことは、
- 資格を活かしたマルチ・インカム・システムの導入
- ストック型ビジネスの構築
と考えています。
1は、医師という国家資格を活かして、時給単価の高い案件を選び、入ってくる収入の流れを複数持つ。
2は、手間をかけず、不動産や株式、ブログ・アフィリエイトのようなストックタイプのビジネスです。
次は、対応策②:税金対策(節税)です。
対応策②:税金対策(節税)
税金対策(節税)は、税の仕組みの理解が第1となります。
税制を知らなければ、そもそも税金対策(節税)は無理ということです。
勤務医の場合、なんとな~く、銀行口座へ振り込まれる額(所得)がほどほどあるために、実際、年間いくら、所得税や住民税、社会保険料を納めているか、わかってない方も多いのではないでしょうか?
まずは、所得の種類からです。10個あります。
1.所得の種類
1.給与所得 | 2.不動産所得 | 3.事業所得 | 4.配当所得 | 5.退職所得 |
6.利子所得 | 7.譲渡所得 | 8.山林所得 | 9.一時所得 | 10.雑所得 |
このうち、私は太字の3つの所得が定期所得として絡んできますので、ここから話を進めていきます。
まず、給与所得、不動産所得、事業所得は総合課税となります。
例えば、給与所得(給与収入ー給与所得控除):1,800万円、不動産所得(不動産収入ー必要経費):ー200万円、事業所得(事業収入ー必要経費):-100万であれば、2000万円ー200万円ー100万円=1,700万円となります。
ここで、給与所得控除は下図です。850万円(厳密には8,500,001円)以上は、いくら給与を頂いても、給与所得控除は、1,950,000円です。
総所得から、種々の控除が引かれ、課税所得額となります。課税所得額が決まれば、下記表で、納める所得税が計算されます。
例えば、課税所得が1,800万円であれば、
所得税は、(18,000,000-2,796,000)×0.4=6,201,600円となります。
ちなみに、住民税は、ほぼ一律10%なので、1,800,000円、
所得税+住民税で8,001,600円となります。さらに、【年収・所得税・住民税・社会保険料・手取り早見表】より社会保険料2,140,000円(この場合、年収を2,000万円としました)を加えると、ざっと1,000万円超となります。
ざっくり、2,000万円程の収入があると、半分以上、お国にもっていかれます。
累進課税制度の威力です。
所得は正比例的に増えても、それ以上に納める税金は加速度的に増えていきます(下図)。
給与収入だけで、税金対策で可能なことは、しっかり控除を取る(扶養控除、寄付金控除(特にふるさと納税)、医療費控除、生命保険控除など)しかありません。
次に、対応策③です。
対応策③:個人事業主さらに法人化
勤務医で給与所得だけの方、つまり給与所得と雑所得だけの方では、節税の選択肢が限られます。
個人事業主になると、節税の幅がぐっとあがります。
私の場合、
事業収入ー必要経費=事業所得
不動産収入ー必要経費=不動産所得
ここの、『必要経費』をぐっと膨らますことができます。
例えば、ブログに関しては、マイル系でクレジットカードの年会費、旅行代金の案分費、サーバー、ドメイン、etc.であったり、不動産では、これも旅行代金の案分費(どこどこの国に行って、不動産を視察したなど)、車費用の案分費などなど。
さらに、個人事業主となって、確定申告を自分で行うことで、税金の知識もぐっとアップします。
まずは、個人事業主になることをおすすめします。
個人事業主になるためには、事業の内容(例えば、不動産、ブログ、講演、コンサルティング、etc)を「個人事業の開業・廃業等届出書」に書いて、所轄の税務署に提出するだけです。
簡単です。勤務している病院サイドにもばれるわけではなく、私も大学病院勤務の頃から始めていました。
次の、「法人化」ですが、これは、副業なり、ビジネスが回って、収益がざっくり800万円以上となれば、考えます。
法人化で、経費枠や役員手当で、さらに手取りの資産が増えます。
例えば、車、保険、社宅、役員報酬での所得分散、etcのメリットが、個人事業主よりはるかに超えてきます。
まとめ:医師の今後の収入減少に対して、策をしっかりとりましょう
今後、医師の収入減少は
1)診療報酬の引き下げ
2)医師の供給過剰
3)働き方改革で時間外労働に規制が入る
4)物価上昇率2%で実質資産は目減りする
5)人口減少・超高齢化により労働人口が減る
上記5つの主な理由から必然です。
対応策として、
1)副業
2)税金対策(節税)
3)個人事業主さらに法人化
を紹介しました。
今回は以上です。