医療訴訟 医者・外科医

医師が医療訴訟のリスクを下げる7つの方法と事前の準備策

2021年9月4日

医療訴訟

医師が医療訴訟を避ける7つの方法と事前の対応策

若手医師の方向け。

医師になったばかりです。これから長い医者人生で、「医療訴訟」とか心配です。対策とか、日々診療で意識することなどあったら教えてください。

こんなお悩みを解決します。

✔ 本記事の内容

  • 医療訴訟のリスクを下げる7つの方法
  • 事前の準備策

✔  本記事の信頼性

勤務医ブログ管理人 The 勤務医:外科勤務医を30年余りやってきて、訴訟になりかけたことあるが、訴訟はなし。その中で培った経験多数あり。一方で、弁護士法人の顧問医も担当している。両サイドから医療訴訟につき考察します。

日本では。年間800件くらい医療訴訟が起きて、1年間で医師400人に1人の確率で訴えられています。

20年勤務医をしてれば20分の1(5%)、40年勤務医をしていれば、10分の1(10%)の確率で訴訟となります。

ということで、医師として生きていく以上、ニアミスを含め、医療訴訟のリスクは避けて通れません。

勤務医は、知識・経験・技量を患者さんにサービスして、対価として報酬をもらい、加えて、患者・家族から感謝されます。99回普通にできても、1回の不運なシナリオで、訴訟の危機に陥ります。この時のストレスは、はっきりいって尋常ではなく、できる限り避けたいものです。

ここでは、30年余の外科医の経験値と弁護士法人の顧問医として両サイドの立場から、医師が医療訴訟のリスクを下げる7つの方法と事前の準備策を考察してみました。

目次

医師が医療訴訟のリスクを下げる7つの方法

医師が医療訴訟を避ける7つの方法

明らかなミス(過失)はしない

あたりまえですが、「明らかなミス(過失)はしない。」が、基本です。明らかなミスが原因となって、不運のシナリオとなり、訴訟となれば、弁明の余地は、ほぼほぼなしです。これは、謝罪と賠償しかありません。

ただ、長い医師人生、継続的に100%明らかなミスはしないとなると、現実的には結構難しいです。

これには意識が必要です。

どういった意識かについて、例えですが、

ドクターXの『私、失敗はしないので!』というのは微妙です。なぜなら、失敗は時々あるからです。『私、明らかなミス(過失)はしないので!』が正解と考えます。

失敗と明らかなミス(過失)は、意味合いが違います。

失敗は、グレーゾーンです。訴訟になり賠償に至る稀なケースもありますが、請求棄却になるケースがほとんどです。

例えば、大腸カメラで大腸に穴が開く(穿孔)、緊急手術で時に人工肛門に至るケースもあります。患者サイドからは、感情移入も相まって、損害賠償を求めたい気持ちは、当然です。

ところが、大腸カメラの穿孔は発生率は0.005%です。通常、大腸カメラをするにあたって、医師は患者さんサイドに大腸穿孔リスクを説明します。同意書に患者さんの署名が成されます。

大腸カメラの腸管穿孔は、失敗のカテゴリ―、グレーゾーンと考えます。

患者さんの大腸が、菲薄で脆弱であったり、癒着があったり、標準的な手法で大腸カメラをしたのに、穿孔が起こってしまう場合もあります。

一方、教科書的にやってはいけないことをした結果、穿孔を起こしたのであれば、過失を問われ、訴訟で賠償となるケースはあります。

明らかなミス(過失)は、ブラックゾーンです。医師以外の誰でも(患者さん、弁護士さん、裁判官など)が判断できる、責任が追及できる所作です。訴訟になった時、過失が判例のカギとなれば、賠償額も高額になります。

明らかなミス(過失)はシンプルです。お腹の中にガーゼを置き忘れたとか、ある薬Aに重篤なアレルギー既往がある患者さんに、ある薬Aを投与して、重篤な結果になったとか。

私、明らかなミス(過失)はしないので!』 を脳みそに入れるのは比較的簡単にできます。「ブラックゾーンは絶対ダメ!」でもよいです。

患者・家族とのコミュニケーション

訴訟の背景に、患者・家族とのコミュニケーションエラーが良くあります。

患者さんと向き合って話をしない、電カルばかり見てる、上から目線で横柄な態度をとる、説明がない、、、

患者・家族からの苦情として、よく出てくる、メッセージです。

このような態度を常習化すると、患者さんの状況が悪くなったときに、一気に関係が悪化します。つまり、逃げの姿勢が露呈するわけです。

こんにちは!、どうですか?、良かったですね!、平易な声掛けでOKです。

患者さんの状況が悪くなった時には、つどつど、患者さんと家族のキーパーソンに、真摯に状況を説明する。

言い訳がましいことは、一切言わないほうが良いです。

これを粘り強くやり抜く、そうすることで、患者・家族に伝わります。この医者は一生懸命診て、対応してくれているんだと。

日本は、結果より過程が、欧米に比べて重視される国です。日本で医療訴訟が少ない背景は、この国民性にあります。米国では、“Let's go to court!”、“裁判所に行こう!”が良く聞かれました。

しかし、今後は欧米のように考え方がドライになって、訴訟案件が増えてくる可能性も当然あります。

また、コロナ禍も懸念材料です。面会制限がかけられているので、患者さんの状態が悪化した時には、疑心暗鬼となりやすいです。スマホでWeb面会をしたり、Web説明をしたりと、それでも、状態が芳しくないときには、原則を外れ、家族のキーパーソンに説明することが何より大事です。

ホウレンソウは怠りなく

ホウレンソウも基本です。上司であれ、部下であれ、同僚であれ、メディカルスタッフであれ、報告、連絡、相談は大事です。

これを怠ると、患者さん家族からは、「言ってることと、していることが違うじゃないか!」、「この組織は、バラバラだね!」とか、不信感しか生みません。

また、医師間であったり、医師とメディカルスタッフであったり、職場の中での不信感さえ生みます。

淡々と話し、行動し、少し配慮する

饒舌に、流暢に患者さんに話す必要はありません。ゆっくり、わかりやすく、淡々と、太めの声で話すことが大事です。

医師の話に飾りがあると、悪いシナリオとなった時に、その差に、感情移入が一段と加わります。

医師の行動にオーバーアクションは全く必要ありません。普通の、所作、礼儀で全く問題ありません。もちろん、横柄な態度は論外ですが、こび、へつらいも論外です。

ただ、少しの配慮は必要です。女性への診察では、女性の看護師を同席させるとか、かけるシーツを用意するとか、デリカシーにかけた言動は慎むとか。

判断に迷ったとき、わからないときは、素直に聞いて自分で調べる

判断に迷ったときは、どうしていいかわからないときは、看護師さんにも、後輩医師にも、同僚にも、上司にも素直に聞くのが得策です。変な遠慮、名誉や自尊心が壁となって、聞かないほうがバカです。医師に限らず、医療者は、聞かれると、ある意味、自尊心をくすぐられたような感じとなり、喜んで、知りうる限りの情報を提供してくれます。

また、調べることも大事です。これには、三つ意味があって、一つ目は、聞いたことに対する答えが客観的にどうなのか。二つ目は、医師としての知識の向上、三つ目は、自己完結型の解決法の習慣化です。

このパターンを習慣化しておくと、訴訟になりかけたときは、功を奏します。

例えば、素直に聞く=複数で話し合った、自分で調べる=書物、論文など参照した、となりますね。

100%は禁句、書面に記す

これは常識ですが、「100%うまくいく」は禁句です。どんな小さな手技とか手術でも100%うまくいくことはありません。医療は、何が起こるかわからない、カオスの世界です。

私は、30%以上の手術死亡のリスクがありそうな患者さんの待機手術はしません。5%の手術死亡が予想される手術でも、現状ではかなりハイリスクです。

99%大丈夫と思っていても、ムンテラ(説明と同意のこと)では、しっかり、リスクと根拠を述べ、書面に記し、患者さんと家族に納得いていただいたうえで署名をもらい、電カルに保存します。

99%大丈夫と言われると、患者さんサイドは、ほぼほぼ、安心と思います。しかし、それだからこそ、合併症なりトラブルが発生し、不幸な転機となると、感情移入が加わって、訴訟モードに入ることも時にあります。

医療はカオスの世界であり、医師にとって100%は禁句であり、書面に残すことはマストとなります。

客観的に自分を評価してくれる理想の仮想医師をつくる

経験値を積み上げた医師でも、訴訟リスクは当然あります。医療は、10年前の常識が非常識となり、議論の余地ある領域が多々あります。学会でも、ディベートと言って、教授同士が、“とある所作”をめぐって、180度違う立場から、議論をします。

私は、判断に迷ったときや決断を強いられるとき、もちろん、仲間に相談したり、自分で調べたりするわけですが、同時に、自分の中に理想の仮想医師を作って、

ドクターAだったら、「こういう時は、こういう根拠で、こういう判断をするだろう」とか、

ドクターBだったら、「この場合、○○といった理由で、こう対処するだろう!」

といった具合に、自分の医師としての言動を、私がそれぞれの領域でメンターとして作り出している医師(仮想医師)に問いかけ、仮想医師から帰ってくる答えをもとに、言動するように心がけています。

ちょっとわかりにくい、説明となりましたが、医師としての自分の言動に客観的妥当性を持たせようとしているわけです。

客観的妥当性を意識することで、患者さんのシナリオが論理的客観的に、どこでも、誰に対しても、説明可能となります。

事前の準備策

事前の準備策

事前の準備策は、ズバリ、医師賠償責任保険 (医賠責) です。

医療に100%が存在しないように、医療訴訟も0%ではありません。

マイカー保有者が対人補償無制限の自動車保険に入るように、医師にとっての医賠責はマストアイテムです。

これがないと、マイカーを運転できないように、医療ができないといっても過言ではありません。

ちなみに、 医賠責 については、勤務医が医師賠償責任保険を徹底比較!結局おすすめはどれ?にて詳しく解説しているので、 医賠責 を検討される時はチェックしてみてください。

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まとめ

医師が医療訴訟のリスクを下げる7つの方法

  1. 明らかなミス(過失)はしない
  2. 患者・家族とのコミュニケーション
  3. ホウレンソウは怠りなく
  4. 淡々と話し、行動し、少し配慮する
  5. 判断に迷ったとき、わからないときは、素直に聞いて自分で調べる
  6. 100%は禁句、書面に記す
  7. 客観的に自分を評価してくれる理想の仮想医師をつくる

事前の準備作:医師賠償責任保険は勤務医にとって必須のアイテム。

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The 勤務医は、外科医歴30年余の経験値として、医師・病院側の立場から、また、弁護士法人顧問医として、原告サイドからの訴訟コンサルティングも行っています。両サイドからの経験値に基づいた、コンサルティング(カルテ解釈、過失か注意義務違反か、意見書作成など)が可能です。

医療訴訟に関するコンサルティング(無料で相談可能)が必要な時は、お問い合わせからお願いします。

今回は以上です。

  • この記事を書いた人

The 勤務医

勤務医×ブロガー。勤務医(外科医、産業医、弁護士法人顧問医)、仮想通貨、アメックス・マイル、副業を中心に発信します。

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