医者・外科医

手術を受けるとき、頼れる病院と外科医の見分け方!【消化器がん編】

2021年8月11日

SURGEON

手術を受けるとき、頼れる病院と外科医

消化器(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓)がんで手術を受ける可能性のある方、消化器外科医を目指している研修医、若手外科医向け

今度、大腸がんの手術を受けることになりました。手術を受ける病院が大丈夫か、執刀する外科医が頼れるか、心配です。頼れる外科医と病院の見分け方を教えてください。

こんなお悩みを解決します。

本記事を読むことで

  • 頼れる病院と外科医の見分け方が理解できる
  • 消化器がんの手術を受ける可能性のある方は、安心して手術を受けることができる
  • 外科志望の研修医、若手医師にとって将来の方向性が理解できる

本記事の信頼性

勤務医ブログ管理人 The 勤務医:外科医勤務医歴30年余り、各種専門医を取得し、消化器外科の中でも、特に肝胆膵外科が専門。

手術を受けるとなれば、不安ですよね。“手術を受ける病院は大丈夫だろうか?”“執刀する外科医は信頼できるだろうか?

当然です。

そこで今回は、手術を受けるとき、

  • 頼れる病院の3つのポイント
  • 信頼できる外科医の見分け方の7つのポイント

を中心に、ここでは消化器がん編で解説します。この記事を読めば、頼れる病院と信頼できる消化器外科医の見分け方が理解できます。

目次

消化器がん手術を受けるとき、頼れる病院の3つのポイント

頼れる病院

その①:がん診療拠点病院

消化器がん手術を受けるとき、頼れる病院の第1は、がん診療拠点病院です。

がん診療拠点病院には、

  • 【都道府県がん診療拠点病院】:全国に51カ所、大学病院やがんセンターなど
  • 【地域がん診療連携拠点病院(高度型)】:全国に51カ所、都道府県がん診療拠点病院に準ずる
  • 【地域がん診療連携拠点病院】:全国に298カ所、高度型にあと一歩の病院

の3つのカテゴリーがあります。

がん診療拠点病院の要件達成に、悪性腫瘍の手術年間400例以上というのがあり、その他のがん治療の要件や、コメディカルの活動含め、消化器がんの手術を受けるには、このあたりの病院は選びたい所です

外科医も手術をするために、メンターから手術を学ぶために、経験値を上げるために、時に教授になるために、がん診療拠点病院に集まっています。

その②:手術数の多い病院(high volume center)

最近、論文でよく目にします。○○手術は、high volume centerで手術成績が有意に良好

high volume centerの定義はありません(例えば胃がんの手術を年間100例以上とか)が、その手術症例の絶対数が多いほど成績がよいことは明らかです。

特に、膵臓がんは年間20例以上、あるいは、高難度肝胆膵手術(難しい肝臓や胆道、膵臓の手術)は年間50例以上行っている施設は、手術成績が明らかに良いです。これは、論文も世界からいくつか出版され、グローバルなエビデンスとなっています。

high volume centerで手術成績がよい理由は、

  • 手術が定型化されていること
  • その手術が上手い(あるいは慣れている)外科医が一定数いること
  • クリティカルパス(周術期管理をマニュアル化していること)が充実していること
  • 手術器具、システム、手術場スタッフ、コメディカルが充実していること
  • 学会の修練施設認定を維持するため、病院のメンツ、診療科のメンツ、外科医個々人のメンツのため、常に一生懸命頑張るから

などなどあります。

その③:手術のやり方や成績をHPで公開している病院

手術方法や手術成績を病院のホームページで公開している病院は信頼できます。

なぜなら、手術方法を公開するためには、その手術法に自信があり、妥当性がないと公開はできません

さらに、その手術法には、なにがしらのオリジナリティが加えられていることが多いです。

手術成績もしかりです。

手術成績には、二通りの評価法があります。

一つ目は、急性期の手術成績(手術死亡率)です。

例えば、1000人の患者さんに、大腸がんの手術をしたときに、5人が手術後90日以内に、亡くなられた、この時手術死亡率は5/1000=0.005、0.5%となります。

手術死亡率が低いほど、安全性が高い、つまり、信頼できる病院となります。

もう一つは、5年生存率(長期成績)です。

例えば、大腸がんのステージIIIaで、5年生存率(手術後5年後に生きている確率のこと)80%という結果をカプランマイヤー曲線で出していたとします。

こういった、統計結果を出すこと自体、手術を多く行う必要がありますし、分析して結果を出すこと自体、結構大変な作業です。また、結果が、全国平均より高ければ、その病院は、手術を中心にがん治療で高い評価を得ることができます。

次に、頼れる外科医の見分け方を解説します。

消化器がん手術を受けるとき、頼れる外科医の見分け方7つのポイント

頼れる外科医

その①:外科医はその道の資格をもっているのか?

普通、手術をする外科医は何らかの資格を持っています

ここでは、大腸がんの手術ということで、外科医を消化器外科医“Dr.Soukakigeka”とします。

Dr. Shoukakigekaは国家試験合格後、初期臨床研修医として2年間研修し、「A先生みたいに消化器外科医になりたい!」との思いで、B大学病院消化器外科講座に入局し、消化器外科だけでなく、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺・内分泌外科、外傷・救急を3年間研修し、卒後5年目終了時点で日本外科学会専門医を取得できます。合格率80%。

じゃあ、ここでDr. Syoukakigekaに大腸がん手術を100%任せられるか? 答えは、“No”です。まだ、イニシャチブを取って手術はできません。

Dr. Shoukakigekaの次の目標は?.....少なくとも2つあります

  1. 日本消化器外科学会専門医
  2. 日本内視鏡外科学会技術認定医
  3. 大腸肛門病学会専門医

まず、消化器外科医を目指すDr.ならば、必ずNo.1の日本消化器外科学会を目指します。条件は、消化器外科の手術症例数と学術、それと筆記試験です。合格率は70%です。早くて卒後6年目でとれます。

じゃあ、またここでDr. Syoukakigekaに大腸がん手術を任せられるか? 答えは、“微妙”です。

理由は、

  • Dr. Shoukakigekaの専門が大腸かどうかわからない
  • 消化器外科専門医まで取っても。技術的に任せられるかは???

次に、No.2の日本内視鏡外科学会技術認定医です。大腸がんの手術の主流は、腹腔鏡下手術になっています。

日本内視鏡外科学会技術認定医は、手術のフルビデオ提出が義務で、3人の審査員からチェックされ、合格率は30%以下です。

これを、大腸の手術で取得できれば、大腸がん手術の信頼度は、俄然UPします。

Dr. Shoukakigekaは、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科領域 大腸)を取得しました。

じゃあ、今度こそ、 Dr. Syoukakigekaに大腸がん手術を任せられるか? 答えは、“YesOK”です。

私の周りにも、Dr. Shoukakigekaと同じ資格を持ったDr.が数人いますが、みんな大腸がんの手術は“上手い”です。手術に加えて、なぜ、その手術をするのか、なぜ、そうするのか、すべて“フムフム”と納得させられます。

さらに、No.3の大腸肛門病学会の専門医まで持っていれば、言うことなしです。手術だけでなく、知識、理論も抜群となります。

こういった、資格は病院のHPで確認できますので、手術を受けるときは、確認しておいた方が良いです。

ちなみに、指導医は+αの資格で、経験が長いこと、論文などの学術が合格の要素となりますので、あまり気にしなくて良いです。

また、Dr. Shoukakigekaが主治医にならなくとも、手術を受ける施設にそういったDr.がいれば、心配ありません。Dr. Shoukakigekaが執刀しなくても、指導医として、ほぼ必ず、手術に参加します。

同じように、

食道がんの手術は、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医に加えて、

  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科 食道)
  • 日本食道学会食道外科専門医

胃がん手術は、

  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科 胃)
  • 日本胃癌学会代議員(必ずしも必要ではない)

肝臓がんの手術は、

  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科 肝臓)
  • 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医

膵臓がんの手術は、

  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科 膵臓)
  • 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医

といった感じになります。

その②:外科医のポジションを確認しよう

外科医のポジション(肩書)も信頼の根拠になります。

急性期病院のトップ、ナンバー2、大学病院の准教授や講師クラス、もちろん手術を積極的に行っている教授などは、概して手術が上手いです。

なぜなら、そういった外科医は結果の積み重ねが、ポジションを築き上げてきたわけで、外科医の場合、手術のスキルUPが専門医取得⇒昇進となる場合が多いです。

以前は大学病院の外科教室の教授であっても、学術業績(論文や学会報告、科学研究費の取得歴)などが、教授選考のキモとなっていましたが、最近では『手術の旨さ』で選考されるケースが多くなってきました。

国立大学病院も、独立行政法人となり、外科であれば、患者さんを呼べる=手術が旨い教授、が採算上必要とされてきたわけです。また、手術の上手な外科医の元には、“教えてもらおう!”と外科医が集まってきやすいです。

外科医が集まれば、医局ないし急性期病院のパワーがアップ→収益が向上する、患者さんから信頼を得られる、その地域の医療の質のアップに貢献できるなど、好循環サイクルとなります。

ポジション(肩書)も通常HPに記載されています。

その③:同業種の内科医達がおすすめする外科医は信頼できる

同業種の内科医が、複数、あるいは“こぞって”おすすめする外科医は信頼できます

ここでは、大腸がんの手術ですから、同業種の内科医=消化器内科医、なかでも、大腸カメラを得意とする消化器内科医です。

複数、あるいは、こぞってというのは、意味があります。

病院も、非営利事業とはいえ、収益を出していかなければ継続不可能です。したがって、病院内に消化器内科・外科がある場合は、通常、大腸がんが見つかった時は、同じ病院内の外科に紹介します。

けれど、消化器内科医は本当は知っています。誰に託すのが良いかということを。

したがって、他の病院の消化器内科医達が、複数、あるいは、“こぞって”おすすめする消化器外科医が、本当は最も信頼できるとなります。

その④:トラブル対応に強い外科医は信頼できる

手術はいつも100%上手くいくとは限りません。しばしば、危ない状態になったり、再手術になることがあります。その時こそ、外科医の力量が問われます

トラブルに対応し、良い方向にもっていくスキルは、外科医の経験値と熱意に比例します。

どんな名医が手術をしても、一定頻度トラブルは発生します。これを、迅速に、粘り強く乗り越えてこそ、“信頼できる外科医”です。

その⑤: 感情(怒りや困惑)を表に出さない外科医は信頼できる

上手な外科医は、手術中に感情的に高ぶることはありません。

ただ、冷静に淡々と、事前に描いたシナリオをすすめていくだけです。

よくテレビで、「汗!」とか「何をやってる!」などど傲慢なシチュエーションが出ますが、あれは下手な外科医のやることです。

また、患者さんやコメディカルに対しても、無意味で辛らつな言葉を投げかけることはありません

怒りの感情をモロに表に出す外科医は、下手であると同時に、周りに迷惑をかけます。下手すれば、パワハラとなります。

困惑の感情は、相手に不安と動揺を与えるだけです。

その⑥:自信をもってわかりやすく手術の説明をする外科医は信頼できる

まず、「愛想の良い外科医=上手な外科医」ではありません。もちろん、患者さんへの親切な対応が医療従事者として、重要なことではあります。

それより、自信をもって手術の説明をわかりやすくしているかどうかが、上手な外科医を見極める上で重要です。

極端に言えば、『私に任せてください!』これです。

もじもじしながら、この手術をすると、○○、△△、××といった合併症を生じる確率が、〇✕%で、と言われますとへこみますよね。

ただし、インフォームドコンセント(IC)では、必ず合併症と手術死亡率は、説明する必要があります。

最後は、『一緒に頑張りましょう』です。

その⑦:手術する病気だけでなく、患者さん全体を見れる外科医は信頼できる

そもそも、人の寿命は、一つの病気で決まるわけではありません

だいたい、大腸がんの手術を受ける方も、心臓病があったり、脳血管疾患があったり、糖尿病があったりと、普通にあります。

そこで、信頼できる外科医は、包括的に判断します。

“この患者さんは、80代半ばと高齢で、○○、△△といった問題があるので、この手術で行こう!これが総合的に妥当な選択だ!”と。

頼れる外科医は、“木を見て森を見ず”的な考え方をしません。この患者さんにとって、最も充実した残された人生のQOLを高める選択をします。

患者さんを、一つの病気(この場合、大腸がん)だけに集中してみることはしませんね。

まとめ

手術を受けるとき、頼れる病院と外科医の見分け方!【消化器がん編】というタイトルで解説しました。

疑問、質問、反論、コメントある時は⇒お問合せはコチラ もちろんペンネームでOKです。

今回は以上です。

  • この記事を書いた人

The 勤務医

勤務医×ブロガー。勤務医(外科医、産業医、弁護士法人顧問医)、仮想通貨、アメックス・マイル、副業を中心に発信します。

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